アウタースぺースを視座とする
芸術実践のプロプジェクトについて
1960年代、NASA に勤務していたジェームズ・ラブロックは、生物と環境の相互作用についての仮説「自己統制システム」を明らかにした。後にガイア理論と呼ばれるこの知見は、地球全体をアウタースペースから観察し把握する視点から、地球が一つの巨大な生命システムであることを示した。このような外部的な視点は、人と自然の二項対立、あるいは人間中心のエコロジーとは異なる、生態系それ自体が独自の価値を有するという認識を促すものであった。そして今、人類は自らの活動圏を地球外に求め、積極的に宇宙開発を推し進めようとしており、 アウタースペースはいっそうリアリティーを有するものになりつつある。アウタースペースを視座とする芸術実践は、これまでに地球に存在していたあたりまえの生命的存在を、新たな美的価値をもって浮かび上がらせることが目的である。人類は、地球に誕生し多様化した生命的存在について、それらが地球特有の環境条件に基づいて存在することを自覚することなく、無意識のうちにそれらを美の対象としてきた。しかし今後、人類が非生命圏としてのアウタースペースに出る機会が増えれば増えるほど、反対に地球という生命システムの価値が再認識されることになるだろう。本展覧会が意図するのは、こうした価値意識を先取りし、アウタースペースという視座から、地球という生命、地球に存在する生命、地球に存在した生命など、すべての生命的存在を美的対象として再発見する試みである。そしてさらに惑星倫理とでも呼ぶべきエシカルな価値観の醸成とその共有を目指す。