アウタースぺースを視座とする
芸術実践のプロプジェクトについて

1960年代、NASA に勤務していたジェームズ・ラブロックは、生物と環境の相互作用についての仮説「自己統制システム」を明らかにした。後にガイア理論と呼ばれるこの知見は、地球全体をアウタースペースから観察し把握する視点から、地球が一つの巨大な生命システムであることを示した。このような外部的な視点は、人と自然の二項対立、あるいは人間中心のエコロジーとは異なる、生態系それ自体が独自の価値を有するという認識を促すものであった。そして今、人類は自らの活動圏を地球外に求め、積極的に宇宙開発を推し進めようとしており、 アウタースペースはいっそうリアリティーを有するものになりつつある。
アウタースペースを視座とする芸術実践は、これまでに地球に存在していたあたりまえの生命的存在を、新たな美的価値をもって浮かび上がらせることが目的である。人類は、地球に誕生し多様化した生命的存在について、それらが地球特有の環境条件に基づいて存在することを自覚することなく、無意識のうちにそれらを美の対象としてきた。しかし今後、人類が非生命圏としてのアウタースペースに出る機会が増えれば増えるほど、反対に地球という生命システムの価値が再認識されることになるだろう。本展覧会が意図するのは、こうした価値意識を先取りし、アウタースペースという視座から、地球という生命、地球に存在する生命、地球に存在した生命など、すべての生命的存在を美的対象として再発見する試みである。そしてさらに惑星倫理とでも呼ぶべきエシカルな価値観の醸成とその共有を目指す。
森公一 × 真下武久
主としてコンセプトを森が、システムデザインを真下が担い、チームとしてメディアアート作品の研究・制作を行っている。鑑賞者の脳波や脳血流の計測データを活用した作品、あるいは鑑賞者の呼吸のリズムや姿勢の制御に基づく作品など、バイタルサインを用いたインタラクティヴな作品の制作を通じて、人の生命維持活動に関わるテーマを探求してきた。メディアアートの方法を応用し、芸術と科学を結ぶ実践的試みを続けている。
日時:2月14日(金)ー2月16日(日)
   10:00ー18:00
会場:嶋臺ギャラリー
〒604-0844 京都府京都市中京区御池通東洞院西北角
TEL: 075-221-5007 FAX: 075-861-36120
http://shimadai-gallery.com/

関連イベント:講演会「バウハウス&」



「バウハウス×山脇道子」髙木毬子
山脇道子は1930年からバウハウスデッサウ校が閉校となった1932年までジョゼフ・アルバースたちの元で基礎教育を学び、後にアンニ・アルバースとオッティ・ベルガーが指導する織物工房でテキスタイル・デザイン学びます。他の学生とは異なりデザイン、アートや建築の予備知識持たなかった山脇道子ですが、裏千家の老分を務めていた父によって磨かれた美意識を礎にバウハウスでの制作に取り組みました。
そして帰国時にはバウハウスの学生・教員などから作品を買い集め日本に持ち帰りました。講演では、2019年11月に出版した書籍“Yamawaki Michiko – a Japanese Bauhaus story” 『山脇道子:1つのバウハウス物語』の内容を一部を紹介します。

「バウハウス×茶の湯プロジェクト」 森公一
1930年代初頭にバウハウスラーとしてモダンデザインの源流に学んだ山脇道子は、「バウハウスと茶の湯はとても似ている」と述懐しています。本プロジェクトはそのことばをふまえて、バウハウスに茶道具のデザインを依頼するとどうなるか?を試みたものです。また、このプロジェクトで作られた茶道具は、“memento terra”展における地球を想うためのツール、という位置づけを兼ねています。

「ミース・ファン・デル・ローエとユニバーサルな空間」Wita Noack (ヴィタ・ノアック)
ヴィタ・ノアックの講演は、森公一の展覧会のアイディアにインスピレーションを得たものである。20世紀建築を代表する建築家の一人であるルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエのため、象徴的に箱を一つ用意する。その際ノアックは、ミースが建てた作品、未完に終わった作品を調べ、保存する価値のあるものは何かを問う。箱の中身に関する考察において、ミースのテキストとスピーチ、さらにミースが1932/33年に設計したベルリンの旧レムケ邸で行なった自身の仕事を参照する。

〖ヴィタ・ノアック〗工学、文化学、建築研究と文化財保護を学ぶ。2007年にベルリンエ科大学で博土号取得。1992年から、ミース・ファン・デル・ローエ・ハウス(旧レムケ邸)館長。近代美術、現代美術、近代建築、バウハウス、ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエを専門とするライター、キュレーターおよび講師として活躍。

日時:2月16日(日) 13:30ー16:30
   入場無料・予約不要・定員40名
会場:メディアショップ
〒604–8031
京都市中京区河原町三条下る一筋目東入る大黒町VOX ビル 1F

茶道具制作:Barbara Schmidt(茶道具デザイン)、MadeleineMarquardt(シアノプリント)、石田知史(ガラス工芸)、北村徳齋(仕覆)、白川三枝(陶芸)、四代 諏訪蘇山(陶芸)、高木毬子(情報デザイン)、橋村佳明(木具)、三木啓樂(漆塗)、矢野洋輔(木彫)
協力:安田ゐう子、武村敏弘、二瓶晃、田中真吾、益岡裕子、成安造形大学ファブコ、
資料提供:NASA Image and Video Library
助成:科学研究費助成事業(科学研究費補助金)基盤研究(B)
「アウタースペース/インナースペース/インタースペース・アートの美学」
同志社女子大学科学研究費助成事業対象奨励金 同志社女子大学共同研究助成
ドイツ連邦共和国外務省
日本電通メディアアート支援金